シロバナタンポポが白いのは
 シロバナタンポポTaraxacum albidum)は西日本では珍しいものではなくて、セイヨウタンポポなど黄色い外来種が日本全域に広がる前は、西日本の人たちはタンポポと言えば白い花だと思っていたと、Webやタンポポに関する文献では書いてあります。

 しかし、自分の小学生時代の記憶(昭和40年代の鳥取市)では現在と同様に外来種の黄色いタンポポが標準で、白いタンポポはレアものという認識でした。
 外来種タンポポは1904年に牧野富太郎博士が北海道で確認されたのが一番古い記録です。それから半世紀あまりで西日本まで到達していたという事でしょうか。

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 それはともかく、世界中のタンポポの中では白い種類は少ないようです。中央アジアにある白花蒲公英(bai hua pu gong ying)T.leucanthumケイリンシロタンポポ(朝鮮白蒲公英)T. coreanum Nakai、そして日本のシロバナタンポポ、ウスギタンポポ、キビシロタンポポです。


 そもそも、シロバナタンポポはどうして白いのでしょうか
 おおざっぱに言えば、シロバナタンポポも黄色い色素は作れるけれども、わざわざ分解して白い花にしているらしいです。

 タンポポそのものではないのですが、キク科の花色についての研究があります。「キク科植物の花弁におけるカロテノイドの解析に関する研究 」岸本 早苗(農業・食品産業技術総合研究機構 花き研究所) です。こちらのページ「キクの花びらが白くなるしくみ」(花卉研究所)にわかりやすく書いてあります。

 キクの白花と黄花について黄色い色素のカロチノイドを合成する酵素を調べてみると、どちらも正常に機能していて、白花品種は、カロチノイドを合成する能力が欠けているのではないことがわかりました。

 白花品種ではカロチノイド分解酵素(CCD:carotenoid cleavage dioxygenase)があって、合成されたカロチノイドが端から分解されることで白い花となっていたのだそうです。ちなみにこのカロチノイド分解酵素は優性遺伝するとのことです。

 この研究はタンポポではなく、キクで行われているのですが、同じキク科の仲間ですから、タンポポの花でも同じことが起こっていると考えてもいいのではないでしょうか。

  ★シロバナタンポポにカロチノイド分解酵素があるのかどうか、簡単な実験をしてみました。

 よく水洗いしたセイヨウタンポポの黄色い花弁から100%エチルアルコールで色素を抽出します。
その色素液をろ紙にたらしてアルコールを飛ばします。
 そして黄色く染まった部分を短冊形に切って試験管に入れます。片方にはシロバナタンポポの花弁をすりつぶした液、もう一方には対照として同量の蒸留水を入れて室温で半日置きました。

 シロバナタンポポの花弁にカロチノイド分解酵素があれば、シロバナタンポポの汁を入れた方は黄色が分解されて色が薄くなるはずです。
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 左がシロバナタンポポの絞り汁、右が蒸留水です。シロバナタンポポの絞り汁を加えた方は液がオレンジ色になっています。短冊も少しオレンジがかった色になりました。蒸留水の方は短冊も水も色は変わりません。

短冊をもう一晩漬け込んで、さらに長時間反応させてみました。
 左がシロバナタンポポ花弁の絞り汁に漬けたもの、右が蒸留水です。

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 シロバナタンポポの方は少し色が抜けて薄くなっているようです。

 この実験から、シロバナタンポポもカロチノイド分解酵素をもっているため、黄色のカロチノイドを分解して白い花となっていると考えられます。

 それにしても、分解するくらいなら最初から合成しなければいいのに、と不思議に思っていましたら、その疑問の答えがありました。植物生理学会-みんなのひろば-植物の色素に関するQ&Aから引用します。
カロチノイド生合成に関与する酵素が欠けた変異種が研究されていますが、これらを光の下で育てためばえの葉緑体はクロロフィルを合成できますが、カロチノイドは合成できません。カロチノイドは葉緑体で光によって生ずる活性酸素を消す役割をもっているため、カロチノイドを合成できない変異種の葉緑体は、光合成の間、活性酸素を消すことができず、葉緑体は活性酸素によって酸化障害を受けるため、めばえは成長できません。

 ということだそうです。カロチノイドが無いと植物は生長できないのです。

 何故せっかく作った色素を分解してまで白い色にしているのか?という疑問に付いては別のところで考察します。


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